愛でる

 

加賀市、山中にある道場漆器店のバックヤードにお邪魔しました。主屋の一番奥にある部屋に入ると、見たことない数の蒔絵たちが。蒔絵とは、 漆器の表面に漆で絵や文様、文字などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を「蒔く」ことで器面に定着させる漆工芸技法。金沢は、明治から戦後の工芸変革期にかけて京都と並ぶ2大産地だったのだそう。お茶文化が今も継承されている金沢では、お茶席でそれを見かけることはあるけれど、私にとっては敷居の高いモノのイメージがあって、手に取ってじっくり見ることはありませんでした。

これは、数ヶ月後にこれからオランダにお嫁に行く蒔絵なのだそう。

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キンピカ、ギンギラです。「ほ〜」と唸ってしまうほど、細部にまでこだわり表現されていてまさに圧巻です。この絵をよく見ると、女性は筆を持っていて葉に何かをしたためようとしている…なんだか詩のような捉え方。このザ・日本感!豪華!超絶技巧!というモノが海外の方々には人気なのだとか。コレクターの方が、こういった種類のものが特に好きなのか、日本の工芸といえばこういうイメージだから選択しているのかは気になる所。

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一つ質問すると、どこからか次々と箱を持って来てくださり、その中から箱が出て来て、さらに紙に包まれた美しいものたちが次々に出てくる。「骨董屋さんに行くと、すごく安い値段で工芸品を買うこともできます。でも、職人の技と鍛錬と年月を知っているとむやみに安くなんてできない。適正価格でこれが本当に素敵だなっていう人に愛でてもらいたいの。それが若い方であろうが、海外の方だろうが…」そう話すのは、道場漆器店の道場みえさん。ものづくりへの尊敬と愛を感じます。

フィナーレはこちら。

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圧倒的。

木箱から、木箱が出て来て、その木箱を開けると棚箪笥が。引き出しを開けると上段には6つのケースが完璧にぴったりと収まり、下段にはトレイがぴったりと収まっているわけです。この用途のない、愛でるため「だけに」作られた究極の逸品。自分の趣味嗜好なんてさておき、これはすごいとしか言いようがありませんでした。こんな手仕事、人類の中の一体何人にできようか。

このわざわざしまってあるものを解く瞬間が私はとても好き。愛で終わったら片付ける工程まで。少し面倒ではあるけれど笑。日本人の美意識は、本当に不思議だと思う。毎日見える場所に置くのではなく、ある季節にだけ、ある大切なお客さまが来た時にだけ箱を開けて愛でる…そんな風に工芸を楽しむ贅沢を知っている文化。かぎられたもの、刹那的なものが好きなのは桜が美しすぎたからでしょうか。

 

訪問先:道場漆器店(山中)

 
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