誰かにとってはどうでもよくて 誰かにとっては大切なもの

 
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町家暮らしを想像してもらえるよう、町家暮らしのこれまでや、うちのモノにまつわるちょっとしたエピソードを言葉にしました。インスタレーションブログとでもいいましょうか。スマートフォンをお持ちの方は「hitonoto.com」にアクセスし、まずは「Prologue」を、そして部屋にある「1」〜「8」のサインと「Blog」にあることばと合わせてご覧ください。ガラケーなのよっという方はお声かけください。

 

安田奈央











 

誰かにとってはどうでもよくて
誰かにとっては大切なもの

 

プロローグ
1. はじめに
2. 町家に住むということ
3. チャームポイント
4. 泥棒扱い
5. 正しく着る
6. 相方を失ったピアス
7. また使われる日をまっている農具
8. 石は石のままで



 

1. はじめに

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私が旅に出る時、宿は決まってAirbnbか民宿を利用します。ホストが暮らしを楽しむために選ばれたモノたちが、あまりにその人らしさを表現していて…その人の中を垣間見ているみたいでワクワクするからです。

hitonotoのはじめての展示を「自分達をテーマに」と思った時、何か特別なことをしなきゃいけない気がしていました。でも、表現しようとしなくても人は表現しているもの。そうかと思い、普段使っているそのままをお見せすることにしました。

そのままと言いましたが、もちろん友人が来る時のように、散らかっていた書類や本は整頓して、いつもより入念に掃除もしました。不完全さも含め、何か見つけてもらえれば幸いです。



 

2. 町家に住むということ

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家同士が隣接していている町家暮らしは音がつきもの?心配していましたが、思ったより生活音は聞こえません。でも、窓をあけている時は、夕飯の支度の音や、近所の子供たちが遊んでいる声がよ〜く聞こえます。都会暮らしが長かったからか、暮らしの音が聞こえることや、回覧板が回ってくることなどが今はなんとも新鮮で、ホッする瞬間です。なかったものに惹かれているだけなのでしょうか?

夏、庭にすごい勢いで雑草が生い茂った時は、雨上がりの雑草がキラキラして綺麗だったので、むしるのを先延ばしにして雨の日を待ちました。小さな野花が咲いた時は、ガラスの瓶にいれて部屋に飾りました。日常に小さなトキメキポイントがたくさんあるようです。それに気づける心でいたいなあ。

引っ越して数日目かの夜…バケツをひっくり返したような雨の日でした。眠ろうと床についたところ、強風に揺られる古くゆがんだ木造の窓がバシバシバシ〜!と、とんでもない音を立てるのです。

そこにあったティッシュをはさんでもだめ。布きれをはさんでもだめ。ティッシュを耳栓にしてもだめ。手で抑えたら止む音も離した瞬間、もちろんだめー…だめー…ああ。町家に暮らすってこうゆうことか。不便さを受け入れる覚悟が必要なんだとこの時悟りました。*その後建具職人さんに修理をお願いして音問題は無事解決しました。




3. チャームポイント

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2つの取手につい目がいってしまうこの箪笥は、ひいばあちゃんが使っていたモノで、倉庫の一番奥のダンボールの下に埋もれていました。漆のコーティングはハゲハゲ、取手がとれた箇所をリボンと、縄を代わりに使っていたようでした。壊れても大切に使われていたんだと感じ、愛着が湧いたので町屋に。

やっぱりモノは使ってこそ。ホームセンターむさしで、紙やすりとワックスなどを買ってDIY。作業をしたのが夕方だったとはいえ、真夏の庭作業… 木クズと汗でドロドロになりながら削り上げました。頑張ったかいあって、ボロボロだったことを忘れる様相に。嬉。問題の取手は探しても探しても古いこれに似たものが見つからず、しょうがなくネットで買ったわけですが。この潔い不自然さが、これはこれでよしかなと思ってます。以前に思いをはせることができます。



 

4. 泥棒扱い

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実家の納屋のダンボールをあけると次々出てくる…モノモノモノ…戦後の貧しさを知っているばあちゃん世代にとってモノは豊かさの証。私が掃除中に見つけ出し、これ使っていい?というと、「ん〜なん、だめやわいね」という。絶対持ってたことなんて忘れてたでしょ〜といいたくなるわけですが、使うためとしてのモノではなく、所持している事実が大切なよう。思い入れがあったり、自分が価値があるとおもうモノは、誰に言われようと手放せないもの。「いいよ」と許可が出たモノだけを、町屋に持ってきました。

ある日…ばあちゃんから電話が。「なおちゃん、あの壺もっていったらだめやっていったんに!持って行ったやろ?」ほえ?何度説明を聞いても、私には覚えがない…身の潔白を訴え、なんとか私じゃないということで落ち着きました…

またある日…「なおちゃん、やかんもってったやろ?梅ジュースつくるのに使おう思ってたんに!」そんなんもっていかんよ!第一、そのやかん、うちのIHキッチンでは使えんし。「そうか。そうか…」

それから10分後…「ああ、なおちゃんごめんあった!あったわ!やかん」。何か見つからないとは私が疑われる羽目に。トホホ


 

5. 正しく着る

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箪笥の中からは、ひいばあちゃんが使っていた着物や洋服がでてきました。正しく畳まれて、虫食いもなく綺麗です。年配の方用の着物は袖が短く動きやすい。ちょうどいいので私の部屋着になりました。

昔はH&MやZARAはもちろんないし、そもそも生地が簡単に手に入らない。一着を何度も着て、破れたら紡いで、何度も何度も着ました。正しく畳まれた着物をみてそんな風に衣服と付き合っていこうと決めました。




 

6. 相方を失ったピアス

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ピアスって悲しいほどにすぐなくなる。気に入ったモノを買っているわけで、片方だけ残されたピアスがどうしても捨てられず、それがどんどん溜まっていました…。

別々の意図で作られたひとつのピアスだけど分解すればパーツとパーツなわけで…組み合わせを変えればまたつけられるかも…じゃん?こうして私のピアスパズルゲームが始まりました。

何かがない。だから新しいものをすぐ買う…ではなく「ない」を自分のアイデアのきっかけとして活かす。不思議なことに私が合わせ物で作ったピアス。結構褒められるのです。それ自体がいいねというよりも、似合ってるねという意味で。残り物でちゃちゃっと料理を作るのと似ているのかも。




7. また使われる日を待っている農具

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8. 石は石のままで

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河原に落ちてるいびつな石。海辺に転がる丸っこい石。普通にみえる石ころの中に、不思議と目について手にとってしまうものがあります。何がいいのよっていわれると困ってしまうわけですが、なんかいい。体積した過程がみえるマーブル模様のものがあったり、貝などの化石が埋まっているものがあったり、その灰色具合だったり…

キター!これだ!って石に出会った時は、自分の体温が上がるのがわかります。地殻変動を繰り返してできた鉱物の塊が、山の方から流れて、時に大洪水で流れ流れて角がとれ、その意図のない姿になっていることを愛おしく思います。

これらの石は、医王山に行った時に見つけたモノです。純度は低いですが瑪瑙です。まだ山頂から流れてしばらくしかたっていないので、ゴツゴツしていますね。ああ、いいわ。

 

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私が右手の薬指にしている指輪は、父が母に結婚指輪として贈ったモノで、20歳の時に母から譲り受けました。もともとはプラチナに、かぎづめでダイヤモンドがついてるものでした。時代を感じるデザインで、普段つけるには違和感…いつも身につけられるものにすべく、リメイクすることに。プラチナは売って、ゴールド代の足しに。あえて、いびつなでカジュアルに。

父は私が5歳の時に亡くなったので、その記憶がほぼありません。ずっと探し続けてきた父の影。母に渡したときもこれは同じ輝きだったのかなと思うと、やっぱり嬉しいもの。ダイヤモンドっていい。おんなじ。カワラナイ。私にとってのお守りです。